雨の日だけアイドリング不調!?DA65Tキャリイの難解トラブルを追った記録
こんにちは、株式会社Ari・Lです。
今回は整備士泣かせとも言える「雨の日だけ調子が悪くなる」という、なかなか原因特定が難しい故障事例をご紹介します。
車両はスズキ キャリイ(DA65T)。
お客様からのご相談は、
「雨の日になるとアイドリングが不安定になる」
「エンジン回転が上下してハンチングする」
という症状でした。
しかし晴れの日になると何事もなかったように正常。
診断が難しい典型的なケースです。
まずは定番の点検からスタート
入庫後、まずは基本点検を実施。
- パワーバランス点検
- 点火系点検
- 吸気系点検
パワーバランスは良好。
失火しているような状態は見られません。
また、お客様への聞き取りを進めると、
「1年前にISCV(アイドルスピードコントロールバルブ)を清掃したら症状が改善した」
とのこと。
そこで今回はスロットルボディASSY交換を実施しました。
交換後は確かに症状が改善。
しかし完全には治らず・・・。
嫌な予感がしていました。
そして大雨の日に再発
交換後しばらくして、
大雨の日に再び入庫。
症状は以前と同じ。
アイドリングが不安定になり、回転数が上下します。
こうなるとスロットルボディが原因ではありません。
ここから本格的な原因追及が始まりました。
気になったのは3番シリンダーのイグニッションコイル
点検中に気付いたことがありました。
3番シリンダーのイグニッションコイル付近だけ、
なぜか独特な臭いがするのです。
オイル臭でもなく、
焦げ臭でもなく、
例えるなら・・・
「猫のオシッコのようなツンとした臭い」
でした。
さらにコイルカプラー周辺を触ると、
何か液体のようなものが付着しています。
最初は
「コイル内部から絶縁材が漏れている?」
とも考えました。
しかし調べていくうちに、もっと気になるものを発見しました。
ハーネスの中がベタベタ!?

ハーネス保護用のコルゲートチューブを開いてみると、
中が異常にベタベタしています。
しかもかなり広範囲。
さらに分解を進めると、
ハーネスを巻いているテープもドロドロになっていました。
普通の経年劣化ではあまり見ない状態です。
最初は
「テープの成分が溶けたのか?」
とも考えました。
しかしよく観察すると、
熱で溶けたような痕跡はありません。
コルゲートも変形していない。
つまり、
排気熱による損傷ではなさそうです。
原因は雨水侵入か?
ここで思い出したことがありました。
この車両は荷台部分にカバーが装着されており、
以前から雨水侵入が確認されていました。
実際にパッキン交換も行っています。
さらに調べると、
ハーネス上部の分岐部分に小さな穴を発見。
ここからある仮説が浮かびました。
仮説
① 荷台カバー付近から雨水侵入
↓
② ハーネス分岐部の穴から水が入り込む
↓
③ ハーネス内部を水が移動
↓
④ テープの接着剤がふやける
↓
⑤ ベタベタした成分がハーネス内に広がる
↓
⑥ 低い位置にある3番コイル付近へ集まる
↓
⑦ 雨の日だけ接触不良や絶縁低下が発生
↓
⑧ アイドリング不調・ハンチング
非常に筋が通る流れです。
ハーネスは水を運ぶ
実は自動車のハーネスは意外なほど水を運びます。
ハーネス内部の配線は毛細管現象によって、
想像以上に遠くまで水分が移動します。
大型トラックや建設機械でも、
「こんなところから!?」
という場所に水が到達していることがあります。
今回のケースも、
まさにその可能性があります。
猫のオシッコ臭の正体
今回特に印象的だったのが臭いです。
結果的に考えられるのは、
雨水によって劣化したテープや接着剤。
古い接着剤が水分や熱の影響を受けると、
アンモニアのような刺激臭を発することがあります。
その臭いが、
まるで猫のオシッコのように感じられたのでしょう。
故障診断は推理ゲーム
今回のような故障は、
故障コードも出ず、
晴れの日には正常。
部品交換だけでは直らない典型例です。
整備士に求められるのは、
部品交換ではなく原因追及。
目の前の症状だけではなく、
車両の使用環境や過去の修理履歴まで考えながら診断を進めていきます。
今後の対策
今回の車両は、
- ハーネス内部の洗浄
- 完全乾燥
- 分岐部補修
- 防水処理
- 散水試験
を行いながら再発確認を進めていきます。
雨の日だけ発生する不具合は原因特定が難しいですが、
こうした地道な診断の積み重ねが確実な修理につながります。
まとめ
「雨の日だけアイドリング不調」
一見するとスロットルボディやセンサーを疑いたくなりますが、
実際にはハーネス内部への雨水侵入という意外な原因が隠れていることがあります。
車は機械ですが、
故障診断はまるで探偵のような仕事です。
今回もまた一つ、興味深い故障事例に出会うことができました。
同じような症状でお困りの方は、ぜひお気軽に株式会社Ari・Lまでご相談ください。車の不調の裏側にある本当の原因を、一緒に見つけていきます。
